「ノイズ対策」という言葉を聞いたことはありますか?電源装置を設計・選定する際に避けて通れないテーマのひとつです。電源が発するノイズは、同じ装置内の他の回路や、近くに置かれた別の機器に悪影響を与えることがあります。今回は「EMI」と「EMC」の基礎から、対策手法まで解説します。

EMIとは——電源が「ノイズ」を出す仕組み

EMI(Electro-Magnetic Interference:電磁妨害)とは、電子機器が発する不要な電磁波や電気的なノイズのことです。

特にスイッチング電源は、毎秒数万〜数十万回という高速でON/OFFを繰り返すため、その切り替わりの瞬間に鋭いパルス状の電気信号が発生します。これが「ノイズ源」となり、電源ラインや空間を通じて周囲に広がります。ラジオに「ザー」というノイズが入ったり、近くの機器が誤動作したりする原因になることがあります。

EMCとは——「出さない・受けない・乱れない」

EMC(Electro-Magnetic Compatibility:電磁両立性)は、機器が「ノイズを出しすぎない」かつ「外からのノイズにも強い」という2つの性質を両立させることを指します。

EMCは機器の「社会性」ともいえます。自分がノイズを撒き散らさず、かつ他からのノイズにも動じない——そんな"共存できる"電子機器であることが、現代の電子機器に求められる基本的な品質条件になっています。

📌 ノイズの伝わり方と主な対策

  • 伝導ノイズ:電源ラインや配線を通じて伝わる → EMIフィルタ・バイパスコンデンサで対策
  • 放射ノイズ:空間に電磁波として放射される → シールド(金属筐体)・基板レイアウトで対策
  • コモンモードノイズ:電源ラインのプラス・マイナス両方に同方向で乗るノイズ → コモンモードフィルタで対策
  • ノーマルモードノイズ:電源ラインのプラス・マイナス間に乗るノイズ → ラインフィルタ・コンデンサで対策
アポルン

🔆 アポルンより

ノイズって目に見えないから厄介なんだよね。同じ回路でも、基板上の部品の配置やパターンの引き方でノイズの大きさが全然変わるんだ。電源設計って、電気の知識だけじゃなく「ノイズのセンス」も必要なんだね!

国際規格とEMC試験

電子機器を市場に出すためには、各国・地域のEMC規制をクリアする必要があります。日本ではVCCI(情報処理装置等電波障害自主規制)、欧州ではCEマーキング(EMC指令)、北米ではFCC規制が代表的です。

EMC試験では、機器が出すノイズが規定値以下であること(エミッション試験)と、外部からのノイズに対して正常動作すること(イミュニティ試験)の両方が確認されます。産業機器・医療機器・車載機器ではさらに厳しい専用規格(IEC 61000シリーズなど)が適用されることもあります。

ノイズ対策は「設計の最初から」が鉄則

EMC対策で最も重要なのは、設計の初期段階からノイズを考慮することです。製品が完成してからノイズ問題が発覚すると、対策のために基板を作り直したり、シールドを追加したりと、コストと時間が大幅にかかります。

回路設計・基板レイアウト・筐体設計が三位一体でノイズ対策に取り組む必要があります。電源装置の設計とEMC対策は、切り離せない関係にあるのです。